「大学生活、このままでいいのかな?」という漠然とした不安を抱えて参加した採用ピッチグランプリ。教科書には載っていない「意外な社会のリアル」と「就活のスタート地点」とは———?
同イベントに参加した大阪公立大学1回生・水光遙さんによるレポート記事です。
「まだ就職なんて考えられない。就活なんて、もっと先の話だ」
そう思っていた私を、たった一つの挑戦が大きく変えた。
大学に入学してから、私はどこか物足りなさを感じていました。毎日が淡々と過ぎていく中で、「何かに挑戦したい」という思いだけが心の奥に残っていたんです。そんなときに出会ったのが「採用ピッチグランプリ」でした。
勢いで応募したものの、まさかここまで自分を変える経験になるとは想像していませんでした。
企業を見る視点も、大人との向き合い方も、そして“働く”というイメージさえも変わっていったのです。「採用ピッチグランプリに参加してどうだった?」と聞かれたら、「一つに絞れないほど多くを得られる取り組みだった」というのが私の率直な答えです。
ここからは、私がどのような取り組みを通して、どんな学びを得たのかを順番にお伝えしていきます。
1. 自分の意見を伝えることの大切さを知った

私が伴走した企業は、医療系専門書を扱う「メディカ出版」さんでした。
初回ミーティングはリモートで行い、お試しとしてプレゼンを一度見せてもらいました。 本来は10分に収める大会なのに、気づけば30分の大ボリューム。伝えたいことが多すぎて整理しきれず、途中で話が迷子になる場面もあり、時間も大幅にオーバーしていたんです。
「これ…本番どうするんやろ……」と、やや不安な気持ちに。ほかの人も同じことを感じていたのか、場の空気が少しずつ重くなっていくのが分かりました。
「大人と喋る」
同じ伴走チーム学生の先輩方が落ち着いて的確な意見を述べる中、私は正直とても焦っていました。そもそも敬語をうまく使える自信もないし、つたない言葉で何を言えばいいのかもわからない。初対面の大人相手に意見なんて……
しかもリモート越し。
画面越しの沈黙がいつもより重く感じて、余計にハードルが高く思えました。
え、無理じゃない?こわいよー。人事の方だし厳しそうやし。てか、なんで先輩そんなにしゃべれるんですか、ハードル上げないで(泣)と心の中でパニックになっていたのを覚えています。
意見は完璧じゃなくてもいい
それでも私は、勇気を出してこう言いました。
「伝えたいことが多すぎて、一貫性がなくなっている気がします」
実際はこんなに簡潔には言えていません。スライドを見ながらつたない言葉で説明し、途中で言葉に詰まったりもしながら、それでもなんとか伝えきりました。言い終えた瞬間、胸の奥がふっと軽くなったのを覚えています。
正直、学生の自分が大人の前でこんなことを言っていいのか迷いました。でも、その言葉を大人の方々が真剣に受け止めてくれたことで“意見は完璧じゃなくても伝えていい” という実感が生まれました。
この経験は、私にとって大きな転機でした。それまでの私は、意見を言う前に「間違っていたらどうしよう」と考えてしまうタイプでした。 でもこの瞬間、「伝えることそれ自体に価値がある」と初めて気づいたのです。
2. 働く環境を“自分の目”で見ることの重要性を知った
2回目のミーティングでは、メディカ出版のオフィスを訪問しました。企業のオフィスに行くのは初めてだったので、向かう途中もずっとドキドキしていました。
ちょうど定時終わりの時間帯で、社会人が足早に帰っていく中を歩きながら、「本当に社会人の世界に足を踏み入れるんだ…」という不思議な感覚がありました。
少し早く着いた私は、オフィスを軽く案内してもらいました。自由に好きな席を選べる共用デスク、先輩が新入社員をサポートし親睦を深める制度、リモートワーク、フレックスタイム制など、私が想像していた“会社”よりもずっと多様で柔軟な働き方が広がっていました。
あれ?社会人って意外と……?
そして何より印象に残ったのは、社員の方々が自然にコミュニケーションを取ってくれたことです。対面で初めて会った社員さんは、リモートのときよりもずっと話しやすく、冗談も交えてくれる方でした。
その姿を見て、私は本当にびっくりしました。だって、私の中で“社会人”って、「完璧」「固い」「厳しい」「怖い」この4コンボだったんです。
学生と社会人は年齢も離れているし、私は社会のルールも敬語も怪しい。 社会人って“別世界の人”みたいに感じていました。
「え、私こんな状態で話して大丈夫なん…?知らん間に失礼なことしてたらどうしよう…」って、勝手にひとりでビビってました。

でも実際に会ってみたら、形式ばった雰囲気はなく、 冗談も言うし、悩むし、一緒に考えてくれるし、普通に笑うし、「あれ、社会人って…こんなにあったかいんや」と気づいた瞬間、肩の力がスッと抜けたんです。これは、就活の面接だけではきっと気づけなかった視点なんだと思います。
自分の目で企業を見る
就活の面接だけでは絶対に見えない“素の社会人”に触れたことで、働くことへのイメージが大きく変わりました。企業の“リアルな空気”を知ることが、自分が働く姿を想像するうえでどれほど大切なのかを実感したのです。
素を見ることは、企業と本気で向き合うことにつながる。
そしてそれは、就活で企業を見極める目を育てることにもつながると思います。
この企画に参加したからこそ得られた視点でした。
3. 企業を見る視点が変わった
本番のプレゼンでは、発表者の方が緊張しながらも本当に素晴らしい発表をしてくれました。

特に初回のプレゼンではなかった「困難は諦める理由ではなく、挑戦する理由だ」という言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり熱くなりました。この言葉は、一緒に何度も内容をブラッシュアップしてきたからこそ生まれたものだと感じています。だからこそ、あのメッセージがまっすぐ心に刺さったんだと思います。
見つけた私の会社選び基準
気づけば私は、メディカ出版という会社に強い愛着を抱いていました。出版業界に危機が迫る状況でも、前に進む理由を探し続けるようなその熱意に、強く心を動かされたんです。
「あ、私こういう会社で働きたいんだ」
そう思える企業に出会えたことは、この企画で得た大きな収穫のひとつでした。
他の企業のプレゼンを見て、さらに大きな学びがありました。それは、「どの企業にも、強みと弱みがある。」ということです。

どの企業にも、事業の特性や働き方ゆえの“難しさ”があります。
たとえばロート製薬には、成長を重視するからこその厳しさがありました。 一方で、若手でも挑戦できる環境が整っていて、成長したい人にとっては大きなチャンスが広がっていることも知りました。日本郵便では、現場の仕事に体力的な負担がかかる場面がありますが、一方でチームで助け合いながら仕事を進められる環境があり、さらに一日の仕事がその日のうちに必ず完結するという安心感も魅力として伝わってきました。
こうして“弱み”と“強み”の両方を知ったとき、企業を見る視点がガラッと変わりました。
どの企業にも弱みはある。でも、その弱みをどう受け止め、どう強みに変えているのか。そこにこそ企業の本質が出る。
そう気づいた瞬間、私の中で就活の軸がはっきり形になりました。
この経験を通して、 「弱みごと愛せる会社を選ぶ」という自分の就活の軸が自然と生まれました。
それは、 「条件がいいから」「有名だから」といった表面的な理由ではなく、“その会社の価値観に自分が共感できるか”という視点で企業を見るようになった瞬間でした。
「条件」だけでない企業の価値
採用ピッチグランプリは、企業の魅力を知る場であると同時に、自分の価値観と向き合うきっかけをくれる場所でした。企業の“強み”だけでなく“弱み”にも目を向け、その弱みをどう受け止め、どう強みに変えているのか。そこに企業の本質があると気づけたことは、私にとって大きな財産です。

知名度や待遇といった外側の条件だけでなく、その会社の価値観に自分が共感できるかどうかで選ぶことが私にとって大切だと気づきました。ここでいう価値観とは、 会社が何を大切にし、どんな想いで働いているのか、そして弱みや課題にどう向き合おうとしているのかといった“その会社らしさ”を自分の肌で実感することが重要だと気づいたのです。
この企画に参加したからこそ得られた視点があり、出会いがあり、成長がありました。
だから私は、胸を張ってこの企画をおすすめしたいです。
文・水光遙(大阪公立大学 商学部 1年生)
編集・株式会社NOVEL