2026.05.14

穴の空いたバケツに、水を注ぎ続けていませんか― 採用と、人が根付くための土台の話

NOVEL HR Partners社会保険労務士事務所の脇田です。

これから採用・定着・労務にまつわることを、現場で感じたことを交えながら書いていきます。

今日は採用と定着について。

採用を頑張っているのに疲弊している。

人が入っても入っても、組織が厚くならない。そのたびに求人を出して、面接をして、採用する。

その繰り返しの中にいる会社は決して少なくないと思います。

でも、これは採用の問題ではないことが多く、バケツに穴が空いたまま、水を注ぎ続けているだけかもしれません。

採用は「動いている感」が出る

人が辞めたら、まず採用活動を始める。どの媒体を使うか、予算はいくらか、どんな人物像を求めるか。とりあえず動ける。目に見えて何かをしている実感があります。

一方で、定着についてはどうでしょうか。

オンボーディングを整える、上司とのフォローアップ面談を仕組み化する、帰属意識を育てる風土をつくる。メンバーと対話の機会をつくる。どれも大事だとわかっていても、すぐに効果が出ないし、効果を感じにくい。

採用活動が外科手術のように即効性があるものだとしたら、定着に関することは体質改善のようにじわじわとしか効いてきません。だから後回しになりやすいのです。

でもつみたてNISAと同じで、やっている間は実感が薄くても、長期で見ると圧倒的な差が生まれる。定着に投資し続けている会社は、気づけば採用コストが下がり、組織が着実に厚くなっています。

「土台」がないと、静かに人が流れていく

早期離職の理由を調べた調査によると、「職場の雰囲気・社風が合わなかった」が半数近く。つまり、入った後の環境の問題で辞めている人が最も多いのです。

出典:マイナビキャリアリサーチLab「早期離職を防ぐオンボーディングとは?従来の研修との違いやメリットについて解説」

面接官が素敵で入社を決めたのに、配属先の雰囲気が違った。聞いていた話と実態がズレていた。

こういう「土台の穴」が、静かに人を流し続けます。

恐ろしいのは、表面上はすぐ困らないことです。人が辞めたら採用すればいい、という動き方ができてしまう。でも組織の力は、時間とともに静かに目減りしていきます。

帰属意識と人材不足感の関係を調べたデータでは、帰属意識が低い職場は高い職場と比べて、人手不足感が10ポイント高いという結果が出ています。

出典:MS&Consulting​「tenpoketチームアンケート」​ビッグデータ分析​(サービス業565店舗対象)​
土台に投資すると、採用が変わる

帰属意識の低下が離職を招き、残った人の負担が増え、さらに離職が進む。このスパイラルから抜け出せなくなったとき、はじめて「しまった」と気づきます。気づいたときにはすでに、負のループから抜け出せなくなっていることも多いのです。

土台に投資すると、採用が変わる

では、定着のための土台とは何でしょうか。

大きく2つあると思っています。「働くための土台」と「居場所をつくる仕掛け」です。

「働くための土台」は、就業規則、雇用契約書、給与体系、評価制度など、会社のルールとして存在するもの。これは加点方式ではなく、減点方式だと思っています。整っていることが当たり前。でも何かあると信頼が一気に失われます。

給与の計算が合わない、残業代のルールが曖昧、就業規則に書いてあることと実態が違う。そういった「ズレ」は、入社前には見えません。でも入社後に気づいたとき、一気に不信感に変わります。早期離職の遠因になっているケースは少なくありません。

「居場所をつくる仕掛け」は、オンボーディング、フォローアップ面談、社内アワード、全社総会など、「この会社の一員だ」と感じるための体験や接点のこと。
定着率向上に最も効果があった施策の1位は「直属の上司との定期面談」(エン・ジャパン「早期離職実態調査」2025年、n=291社)という調査結果もあります。

制度を整えるだけでなく、人と人のつながりをつくる体験が、帰属意識の根っこになります。

そして、定着の取り組みは採用にも還ってきます。

フォローアップ面談の記録が積み上がると、「うちの会社にフィットする人」の像が見えてきます。どんな背景の人が活躍しているか、どんな価値観の人がミスマッチになりやすいか。そのデータが採用のペルソナ設計に活きます。「とりあえず人を集める」という採用から、「この会社に合う人に届ける」採用へ。採用と定着は、ループしています。

やるなら、今

組織の土台づくりは、派手ではありません。すぐに結果が見えるわけでもない。でも、整っているかどうかが、じわじわと、確実に効いてきます。

採用をいくらがんばっても、穴が空いたままでは水はたまりません。先に穴を塞ぐこと、あるいは採用と土台づくりを同時に進めること。それが、消耗しない組織をつくる第一歩だと思っています。

気づいたときから始めればいい。でも、やるなら今です。

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脇田 沙江 / Sae Wakita
社会保険労務士 執行役員CAO

バックオフィス全般を担ってきた当事者目線と、社労士としての専門知識、その両方で伴走します。2児の母。日課はランニング、好きな食べ物は餃子。オフィス周辺のコーヒーショップ巡りも楽しんでいます。     

採用支援と労務・制度の土台づくりを一気通貫でサポートしています。

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