2026.06.01

令和8年度 大阪府 利益率向上・賃上げ支援事業とは?【社労士解説】

こんにちは。NOVEL HR Partners社会保険労務士事務所の脇田です。

補助金や助成金って、なんとなく「申請すればもらえるお金」というイメージを持たれがちです。でも私はずっと、そうじゃないと思っています。

こういった制度は、「こんな会社を増やしたい」「こんな雇用環境を社会に広げたい」という国や自治体の意思の表れ。その方向に向かって取り組んでいる会社への、いわばご褒美です。あるいは、そうしたいと思っている会社の背中をそっと押してくれるもの。

ただ、残念なことに、こういった制度は自分から調べないとなかなか届いてきません。せっかく賃上げや設備投資に前向きに取り組んでいるのに、知らなかったがゆえに活用できなかった、というのは本当にもったいない。

今回はそんな思いから、大阪府内の中小企業の方にぜひ知っていただきたい補助金制度をご紹介します。

令和8年度 大阪府 利益率向上・賃上げ支援事業です。

この補助金、ひとことで言うと?

利益率向上のための投資に使える補助金。賃上げ2%の宣言とセットで活用できます

システム導入、設備投資、展示会出展、外部コンサル、研修費など、生産性向上や売上拡大につながる投資に幅広く使えます。

補助率は2/3、上限は500万円。採択予定は600社程度と規模も大きく、大阪府内の中小企業にとって使いやすい設計になっています。

申請できる会社の条件(7つ)

以下のすべてを満たす必要があります。

① 賃上げ2%の宣言ができる
給与支給総額(役員報酬・退職金・法定福利費を除く)を、前年度比で2.0%以上引き上げる目標を設定できること。従業員にこの宣言を周知する必要があります。

② 追跡調査への回答に同意できる
事業完了時・翌年度・翌々年度の計3回、大阪府から賃上げ状況の調査があります。

③ 従業員が1名以上いる
常時雇用する従業員が1名以上いること。役員・専従者は除きます。申請時期の直近の決算資料を提出する必要がありますが、その期に従業員を雇用している必要があります。

④ 中小企業に該当する
中小企業等経営強化法に規定される中小企業者(個人または法人)、企業組合、協業組合、一般社団法人が対象です。ただし、大企業が実質的に経営に参画していないことが条件です。

業種別の規模要件は以下のとおりです。いずれかの要件(資本金 または 従業員数)を満たせばOKです。

⑤ 大阪府内に主たる事業所がある
本社(本店)である必要はありません。大阪府内に主たる事業所があればOKです。法人は「本店または主たる事業所」、個人は「住所または主たる事業所」が大阪府内にあることが条件。府税事務所発行の納税証明書の「住所又は所在地」欄で確認されます。

⑥ 事業者名の公表に同意できる
採択された場合、事業者名と所在市区町村が大阪府HPに公表されます。

⑦ 全申請書類を提出できる
必要書類がひとつでも欠けると、審査対象外になります。申請は電子申請のみで、紙での提出はできません。

必要書類・テンプレート・申請フォームはすべて公式サイトの申請ページにまとまっています。 申請ページはこちら

何の経費に使えるの?(補助対象経費)

補助対象となる経費は以下の5区分です。

対象外になるものに注意!

  • PC・スマートフォン・汎用タブレット・生成AI月額費用など汎用品
  • 自社スタッフの人件費・旅費・交通費
  • 建物の建設・工事・改修費
  • 固定費削減や人員削減だけで利益率を上げる計画

スケジュールを確認しよう

申請は6/26(金)まで。タイトスケジュールですのでお気をつけください。

補助金は後払い(精算払い)です。 事業実施中の費用はすべて自己負担となります。資金繰りの確認を忘れずに。

申請で気をつけたい3つのポイント

1. 申請は企業自身で行う必要があります
外部機関が代わりに申請書類を作成することはできません。アドバイスを受けることはOKですが、作成・提出は申請者本人(役員や従業員)が行う必要があります。

2. 採択後に発注・契約が必要
補助対象となるのは、採択決定後に発注・契約した経費のみです。すでに発注済みのものや、採択前に申し込んだ展示会は対象外になります。

3. BCPの策定は審査で加点対象
事業継続計画(BCP)を策定している事業者は、審査で加点されます。BCP策定を検討している方はこの機会に合わせて進めるのも一手です。

よくある疑問・ここが気になる!Q&A

申請を検討する中で「これってどうなんだろう?」と思いやすいポイントをまとめました。

Q1. 本社が大阪府外でも申請できますか?

A. できます。本社(本店)である必要はなく、大阪府内に主たる事業所があればOKです。ただし、府税事務所発行の納税証明書の「住所又は所在地」欄に大阪府内の住所が記載されていることが確認条件となります。

Q2. 従業員が減って給与総額が下がった場合、一人ひとりは昇給していても要件を満たさないことがありますか?

A. その通りです。比較するのはあくまで「給与支給総額」の金額のみで、従業員数は考慮されません。たとえば基準年度に従業員10人・総額300万円だった場合、目標達成年度に従業員が5人になり総額250万円になっていれば、一人ひとりが昇給していても要件未達となります。
「基準年度の総額から2%UPしているかどうか」を見られます。
退職や採用状況によって総額が変動する会社は、申請前に総額ベースでシミュレーションしておくことをおすすめします。

Q3. 賃上げ2%が達成できなかった場合、補助金を返還しないといけませんか?

A. 未達成だからといって、直ちに返還を求められるわけではありません(虚偽申請は除く)。ただし事業完了後・翌年度・翌々年度の計3回、大阪府から追跡調査があります。宣言した以上は達成できるよう、申請前にしっかりと計画を立てておくことが大切です。

Q4. 社労士や外部の専門家に申請書類を作ってもらえますか?

A. 書類の作成はNGです。申請書類は申請者本人(役員や従業員)が作成する必要があります。ただし、内容についてアドバイスを受けることはOKです。「書くのは自分、相談は専門家に」というイメージです。

Q5. すでに発注・契約済みの投資は補助対象になりますか?

A. なりません。補助対象となるのは採択決定後に発注・契約した経費のみです。「採択されたら使おうと思っていた設備をすでに発注してしまった」というケースは対象外になるため、採択が決まるまでは発注を待つことが重要です。

社労士からひとこと

この補助金は「賃上げ」と「投資」をセットで考える制度設計になっています。
そして私が一番お伝えしたいのは、補助金はあくまできっかけ・ご褒美であって、目的ではないということです。

大切なのは、「設備やシステムに投資して生産性を高め、利益率を上げ、その成果をスタッフに還元する」という好循環を会社の中に意識的につくること。補助金はその取り組みを後押ししてくれるものです。

この流れを本物にするために、いくつか意識しておいてほしいことがあります。

賃上げを「単発の対応」で終わらせないために
せっかく賃上げに踏み出すなら、評価制度や等級制度と連動させることで「頑張れば報われる」という仕組みに育てていくことができます。会社の成長と個人の成長がつながる設計ができると、社員の定着率や満足度にも大きく影響します。

賃上げが「会社からのメッセージ」になる
義務だから賃上げするのではなく、「会社が成長した証として皆さんに還元したい」という姿勢で伝えることで、社員の会社への信頼や帰属意識が変わります。補助金をきっかけに、そのコミュニケーションのあり方を見直してみるのもいいかもしれません。

整えた環境が採用力にもなる
補助金で導入したシステムや仕組み、そして賃上げの実績は、求人時のアピールポイントにもなります。「働きやすい環境を整えている会社」として選ばれる存在になることが、中長期的な成長につながります。

おわりに

賃上げや投資に前向きに取り組もうとしている会社が、こういった制度をうまく活用して、いい循環をつくっていけたらいいなと思います。申請期間は5/25〜6/26まで。短いですが、ぜひ一度公式サイトをのぞいてみてください。

令和8年度 大阪府 利益率向上・賃上げ支援事業 公式サイト

※本記事の情報は説明会資料および公式サイトをもとに作成しています。申請にあたっては必ず最新の公募要項をご確認ください。詳細は大阪府利益率向上・賃上げ支援事業事務局(050-5530-2226)までお問い合わせください

プロフィール画像
脇田 沙江 / Sae Wakita
社会保険労務士 執行役員CAO

バックオフィス全般を担ってきた当事者目線と、社労士としての専門知識、その両方で伴走します。2児の母。日課はランニング、好きな食べ物は餃子。オフィス周辺のコーヒーショップ巡りも楽しんでいます。     

採用支援と労務・制度の土台づくりを一気通貫でサポートしています。

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