その「配慮」、辞める理由になっていませんか―ホワハラの話
こんにちは。NOVEL HR Partners社会保険労務士事務所の脇田です。
先日、日経新聞で「ホワハラ」に関する記事を見かけました。
ホワハラが「転職のきっかけになる」と答えた人が、4割にのぼるそうです。
ブラック、パープルときて、今度は「ホワイト」までハラスメントになってしまうとは。
仕事に対する考え方や価値観は、人によって本当に十人十色です。同じ「定時で帰っていいよ」というひと言も、ある人には助かる配慮です。でも別の人には、成長を止められた仕打ちになります。
誰かにとっての配慮が、別の誰かにとってのハラスメントになり得てしまいます。それでも名前がついた瞬間、なんとなく「正式に認定されたもの」として扱われていく…そのことに、モヤモヤした気持ちもあります。
今回はこのホワハラについて書こうと思いました。
結論からお伝えすると、ホワハラの正体は「会社と本人の、仕事に対する考え方のミスマッチ」だと思っています。
配慮そのものが悪いのではありません。会社がどんなスタンスで、何を大事にしているのか。それがきちんと伝わっていないことが問題なんです。
だからこそ、会社のスタンス・考えを発信することが大切です。それに共感した人が集まる状態をつくることが、一番の予防策になるのではないかと。
良かれと思って外さなかった、補助輪
「大変そうだから、その仕事は巻き取っておいたよ」「もう定時だから、今日はこれで帰ってください」
上司や先輩からそう言われて、悪い気がする人はあまりいません。でも最近、この“配慮”がハラスメントとして扱われる場面が増えています。「ホワイト・ハラスメント」、略して「ホワハラ」です。
たとえるなら、自転車の補助輪をいつまでも外さない親心に似ているのかなと思ったのですがどうでしょうか。転ばないように、痛い思いをしないように、その気持ちに嘘はありません。
でも、外すタイミングを逃し続けると、本人はいつまでも一人でこげるようになりません。そしてある日、「自分でこげる自転車が欲しい」と、静かに会社を去っていきます。
数字が示す、“配慮”の代償
マイナビキャリアリサーチLabが2025年12月に調査を行いました。対象は、中途入社1年以内の正社員1,446人です。その結果、14%が「ホワハラを経験した」と回答しました。
この経験者のうち71%が「1年以内に転職したい」と答えています。未経験者は48%なので、大きく上回る数字です。
配慮したつもりが、逆に転職の後押しをしてしまっているとしたら、ちょっと意外じゃないですか?

さらに直近、2026年8月にエン・ジャパンが「エン転職」利用者1,385人に調査を行いました。そのうち15%が「ホワハラを経験した」と回答しました。
経験した内容で多かったのは、以下の通り。

つまり、彼らが不満に感じているのは「配慮されたこと」そのものではありません。「成長する機会を奪われたこと」なのだと思います。
そして日本経済新聞が独自に企業を分類した図解があります。働きやすさは高いが働きがいは低い企業を「ホワイト」、両方高い企業を「プラチナ」と呼んでいます。ホワハラは、まさに「ホワイト止まり」の職場で起きやすい現象だと言えそうです。

働きやすさは、制度や仕組みを整えればある程度は近づけられます。でも働きがいは、そう簡単には作れません。
だからこそ、働きやすさだけを整えて「ホワイト企業です」で満足してしまうのは、ちょっと危険。個人的には、働きやすさだけでなく、働きがいこそが絶対に欠かせないものだと考えています。
一律のルールより、採用の入り口で伝える
では、どうすればいいのか。ここでの落とし穴は「配慮を一律のルールにしてしまうこと」です。
定時退社を促すことも、仕事を巻き取ることも、本人が望んでいれば助かる配慮です。でも望んでいなければ、成長を奪うホワハラになります。同じ行動が、相手によって薬にも毒にもなるということです。
だからこそ、入社してから一つひとつすり合わせるだけでは、正直追いつきません。もっと手前、採用の入り口の段階で、会社が何を大事にしているのかを、はっきり言葉にして発信しておくことが必要だと思っています。
そこが曖昧なまま採用が進むと、入社後に「思っていたのと違う」というミスマッチが起きやすくなります。
共感して入社した人であれば、同じ配慮を受けても「大事にされている」と感じやすく、「機会を奪われた」とは感じにくいはずです。配慮そのものよりも、その配慮を渡す前提が、事前にすり合っているかどうかが分かれ道になります。
結局、大事なのは「伝わってほしい人に伝わっているか」
私自身、この手のニュースを見るたびに思うことがあります。仕事に対する考え方は、人それぞれだということです。同じ配慮を、成長を奪われることと捉える人もいれば、サポートと捉える人もいます。どちらも間違いではありません。
だからこそ、配慮をどう見せるかより先に、自分たちが何を大事にしているのか、まず言葉にして発信することが重要です。
今回の「ホワハラ」という言葉は、そのことを再認識させられました。
バックオフィス全般を担ってきた当事者目線と、社労士としての専門知識、その両方で伴走します。2児の母。日課はランニング、好きな食べ物は餃子。オフィス周辺のコーヒーショップ巡りも楽しんでいます。
採用支援と労務・制度の土台づくりを一気通貫でサポートしています。