アートがビジネスにもたらす効果とは?アートとの接し方やビジネスへの応用を徹底解説

2023.06.20

こんにちは。NOVELライターの石井です。

ここ最近、「アート思考」という言葉がビジネスの世界で注目されていることをご存知でしょうか?
長年ビジネスにおいて必須といわれていた「ロジカル・シンキング」に対し、自由かつ柔軟にものごとを考える「アート・シンキング」の必要性が、ここ数年で一気に増加してきているのです。

実際に私たちNOVELも、オフィスの一部をアートギャラリー「GALLERY URO」として解放するなど、ビジネスとアートの掛け合わせを図っている真っ最中です。

とはいえ、アート(芸術)とビジネス(事業)は、ある種、水と油のような対極な言葉のように思われがち。利益や効率を突き詰めるビジネスに対し、アート作品はモノとしての機能的な価値はなく、意味や解釈が詰まった象徴的な存在であるといえるためです。

ずっと交わることのなかったアートとビジネスが、なぜこのタイミングで絡み合うようになったのか?その相乗効果は一体いかほどなのか?
今回は一見難しそうなこの「アート×ビジネス」について、できる限りわかりやすく紐解いていこうと思います。

目次

⒈アートとビジネスの相乗効果とは
 ・そもそも「アート思考」とは
 ・なぜ今、アート思考が求められるのか
 ・アート思考で得られるメリット
 ・アート思考の身につけ方

⒉アートを取り入れる日本企業たち
 ・実例① −寺田倉庫株式会社、マネックスグループ株式会社、株式会社スマイルズ
 ・実例② −株式会社ビズリーチ(現・Visionalグループ)

⒊NOVEL×アートの取り組み
 ・GALLERY UROについて
 ・まとめ

⒈アートとビジネスの相乗効果とは

そもそも「アート思考」とは

アート思考とは文字通り、「アーティスト(芸術家)の思考法」のこと。
アーティストは作品を生み出すにあたり、自分の考えや深層心理にしっかり向き合うことからスタートします。
自分は何に興味を抱いて生きているのか?どんな疑問や悩みに苦しんでいるのか?そう自分に問い続けることで生まれた答えを作品に落とし込むことで、社会に一石を投じるのです。
つまりアート思考とは、「これまでの常識にとらわれない考え方や表現」そして「柔軟な発想」を軸とした思考法といえます。

実際に、新たなビジネスを生み出して成功を遂げてきた人々(Apple、Airbnb(エアビー)の創業者など)の多くがアートの素養を持ち合わせていたと言われています。

ここで気をつけたいのが、「アート思考」と「デザイン思考」は全くの別物だということ。
アートの目的は人々に感動をもたらしたり、世の中に問題提起をすることにあります。一方、デザインの目的は課題解決。
アート思考はあくまで自分軸の考えを重視していますが、デザイン思考は、顧客の課題解決を目指す考え方であり、顧客起点で考えることが重要です。

なぜ今、アート思考が求められるのか

経済産業省が「アートと経済社会について考える研究会」を定期開催するなど、国からも熱い視線を注がれているアートとビジネスの掛け合わせ。
一体なぜこのタイミングで、アート×ビジネスが求められるようになったのか。それはここ数年で不確実性の高い現象が増加し、型にはまった言動では太刀打ちできない時代へと変化しているからです。

頻発する自然災害やAIの急速な発展、そして価値観の多様化…。あらゆる物事が目まぐるしく変化し、先行きが不透明な今の時代は「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。

約束されたレールが無いに等しい現代において「主体性を身につけよう」「明確なビジョンを描こう」と叫ばれて久しいですが、いざ目の前の仕事となると自分の考えをうまく表現できない。そんなジレンマを抱えるビジネスパーソンは決して少なくありません。

日々の仕事をこなす中で、ふと自分の将来に不安を覚える人が増える中、そんな閉塞感を打破するヒントの一つとして、柔軟性や主体性が強く求められるアート思考が注目されているのです。

※VUCAとは…
以下の4つの単語の頭文字を取った造語で、「先が不明確で予測できない」という意味を持ちます。
Volatility:変動性、不安定さ/Uncertainty:不確実性/Complexity:複雑性/Ambiguity:曖昧性

アート思考で得られるメリット

VUCA時代においてアート思考は必要不可欠、と理解したものの、じゃあ実際にはどうやってアート思考を活かせばいいの?と思う方もいらっしゃるでしょう。
アート思考で得られるメリットは大きく2つ存在します。

①イノベーションを生み出しやすくなる
社会課題やニーズを前提とした論理的なアプローチで解決に至るロジカルシンキング。これは再現性のある結果を生み出しやすい一方、似通った答えに辿り着くことが多いです。
一方、アート思考は0から1を生み出すため、サプライズアイデアが生まれやすいという大きな特徴があります。
このため、新規事業やプロジェクトの企画開発で大きな効果を発揮する可能性が大きく、スピーディーかつ多様な価値想像が求められる現代において非常に強力な武器となります。
またアートに正解・不正解はないため、ダイバーシティの促進にも大きく貢献することも。多様な特徴や思考をもった従業員が交わることで、イノベーションが発生しやすくなるのです。

②代替の効かない思考法を確立できる
ロジカルシンキングはビジネスに必須と言われてきた思考法ですが、AI技術の目覚ましい発展で代替される可能性も。Chat GPTの登場によって、ロジカルな提案は人間でなくても生み出せると証明されました。
一方、個々の自由な発想が起点となるアート思考は、代替しにくいアウトプットを生む思考法と言えます。人の数ほど考え方・生み出し方・創造物が異なるため、唯一無二のアイデアを提示することができる方法といえるでしょう。

アーティストという存在は、私たちビジネスパーソンと関係のない特別な世界の人たちのように思われがちです。
しかしビジネスパーソンがその閉塞感から脱却しようともがく時、アート思考は必ずその手助けをしてくれるのです。

▲アート思考を内在化させることで、アーティストが持つ力(アートパワー)を身につけることができます。
(画像出典:株式会社電通|電通報「スタートアップに欠かせないアートの内在化とは?」|最終閲覧日:2023年5月18日|https://dentsu-ho.com/articles/7214)

アート思考の身につけ方

「芸術分野に詳しくないし、自分には難しそう…」と感じる方も多いアート思考。
その理由の多くは、自由な発想の先に待ち構える常識やリスクといった制限に恐れを抱いてしまうから。この自ら課してしまうストッパーをマインドブロックといいます。

しかし、子供時代を思い出してみてください。砂場でお城を作る時、自由帳に絵を描く時。あなたはリスクを恐れて創造をしていたでしょうか?きっと多くの人が、自らの感性に従って行動していたと思います。つまり、マインドブロックがない状態だったのです。
アート思考を身につけるためには、アートを勉強するというよりも「無意識に身についた枷を外す」ことが大きな一歩となります。

実際にアート思考を身につける方法として、VTS(Visual Thinking Strategy)という方法が推奨されています。
この方法はとても簡単で、徹底的にアート作品を見て、感じて、言葉にするだけ。

例えば有名なモナ・リザの絵。「女性が微笑んでいるなぁ」で終わるのではなく、「何が描かれているか?」「絵の中で何が起きていて、これから何が起こるのか?」「どのような感情や感覚が、自分の中に生まれているか?」を自問自答することで、自分の素直な心と向き合い想像力を豊かにすることができます。
もちろん、正解の解釈はありません。自分が直感的に思ったことを誰かと共有したり、1人でつぶやいてみたり。とにかくアウトプットを繰り返します。

とはいえ、あまりにもとっかかりが無さすぎると、アートにあまり触れたことがない方は何も思い浮かばない…となってしまうかもしれません。
そんな時はアーティストの人生や作品が描かれた背景、制作過程といった知識をインプットした上で鑑賞するといいでしょう。知識にこだわりすぎると本末転倒ですが、より深い思考を促すツールとなるはずです。

▲レオナルド・ダヴィンチ『モナ・リザ』。1503年〜1506年頃にイタリアのフィレンツェで描かれたと言われています。世界で1番有名な絵画とも言われる、歴史的作品です。
▲マルセル・デュシャン『L.H.O.O.Q』。現代アートの父と呼ばれるデュシャンの代表作の1つであり、1919年に制作されました。さて、これを見てどんな感想を抱き、どんな制作背景を思い浮かべましたか?

⒉アートを取り入れる日本企業たち

「そうはいっても、別にアートに関する事業をやりたいわけじゃないし…」「アートが本当にビジネスに活きるイメージが沸かない…」そんな意見が根強いことも事実。
ビジネスにおいて、本当にアートは有効な影響力を持ち得るのか?そんな疑問を解消すべく、実際にアートをビジネスに取り込んだ実例とその結果を2つご紹介します。

実例① −寺田倉庫株式会社、マネックスグループ株式会社、株式会社スマイルズ

アートに関わる取り組み(アート・イン・ビジネス)を実施している寺田倉庫マネックスグループスマイルズで、2019年3月から4月にかけて従業員への定量調査を実施。
同時に、その他の一般企業の従業員に対しても同じ調査を実施し、これらの結果を比較してビジネスにおけるアート効果を分析した結果が、以下の通りです。

画像出典:株式会社電通|電通報「ビジネスにおけるアートの効果をどうやって検証するか?」|最終閲覧日:2023年5月18日|https://dentsu-ho.com/articles/7264

結果全ての項目で、アート・イン・ビジネスを実施している3社が、一般企業よりも合成評価指標の平均スコアが上回る結果に!
特に4つ目の「ヴィジョン構想」に着目すると、以下のような効果が現れたそうです。

・寺田倉庫
アートに関連した新事業を多数輩出(アートギャラリーカフェ、美術品保管サービス、伝統画材ラボなど)
・マネックスグループ
現代アート分野で活動する新進アーティストの支援(本社のオフィスプレスルーム壁面に制作する平面作品案を一般公募し、受賞者の作品を約1年間展示するプログラムを実施)
・スマイルズ
従業員/ステークホルダーが自ら新規ビジネスを企画・実施する企業カルチャーの構築

これらの企業は、長期にわたってアートに関連する取り組みを行うことで、徐々に従業員の「アート思考の会得」が進んだそう。
アート由来のビジネスが軌道に乗ることで、事業拡大はもちろん従業員たちの自己肯定感や社内評価の高まりにつながる。アート・イン・ビジネスを取り入れることによって、多角的な効果を挙げていると言っても過言ではないでしょう。

実例② −株式会社ビズリーチ(現・Visionalグループ)

アートパワーとは「問題提起力、想像力、実践力、共創力」などを包含した言葉ですが、このすべてを兼ね備える人は決してアーティストだけではありません。実はスタートアップ企業を創業した経営者たちも該当するんです。

アーティストもスタートアップを経験した人も、どこかで社会に問題を感じ、想像を深め、苦労を伴いながら実践し、その結果としてあらゆる人たちと共創している。こう考えると、いかにアーティストと経営者の共通項が多いかお分かりになると思います。

例えば、人材採用プラットフォームなどを運営するビズリーチ(現・Visionalグループ)は、アートの内在化を実践しているスタートアップ企業。
VisionalのCTO(最高技術責任者)である竹内真はエンジニアであり、アートの教育を受けたわけでもありません。

しかし彼はまさにアート思考をビジネスに深く落とし込んでおり、「アートを通して自分に禅問答を仕掛けることで、最も大事だと思っていたことが実はそうではないことに気付いたり、物事の本質に立ち返るきっかけを得ることもできる」と語っています。

そんな経営者と一緒に働くメンバーは、彼ら/彼女らのエネルギーを浴びながらいつしかその思いに共振し、いつの間にかアートパワーを自分の中にも取り込んでいる……。

アート思考を手に入れたビジネスパーソンはまるで経営者のように、自分がやりたいことを明確にして実践することができる。そんな好循環が生まれる可能性もあります。

⒊NOVEL×アートの取り組み

GALLERY UROについて

アート・イン・ビジネスに取り組む企業を紹介してきましたが、私たち株式会社NOVELもその1つ。
私たちはオフィスの一部をアートギャラリーとして解放し、月替わりでさまざまな若手アーティストの個展を開催しています。

「採用支援を生業にしているNOVELが、なぜアートギャラリーを運営するのか?」という質問をいただくことも多く、その理由は先述した「アート思考」の取得を従業員に促すだけに留まりません。

NOVELでは普段、採用を主としたブランディングなどの支援をしており、そのお相手は一般企業やそこで働くビジネスパーソンが9割以上を占めています。
採用支援をするにあたって私たちは企業ロゴや会社HPなど、アートやデザインがもたらすパワーから多くの恩恵を受けながら日々活動しています。

しかし、その恩恵の源流にいるアーティスト自身との直接的な交流は、ほぼ皆無に等しい状態でした。
アーティストの純粋な創作活動が企業によって搾取される構造も問題視される中、なんとかビジネスとアートの新しい繋ぎ合わせ方を模索できないかと始めたのが、このGALLERY UROです。

もちろん、ビジネスとアートは経済面だけのwin-winで成立させられるほどシンプルなものではありません。
この難しいバランスをつなぎ合わせる架け橋としてUROを開放し、ビジネスとアートの新しい関係性を見つけていくことを目指しています。

まとめ

アート=難しい、と捉えられがちですが、その中身は「自己との対話」といういたってシンプルなものです。
アート作品を見て「何を感じ、何を思ったのか」ということに正解はなく、じっくりゆっくり自分だけの答えを導き出すことこそが、アートを楽しむということになります。

アート思考はその繰り返しで身につくものであり、一朝一夕で効果が出るものではありません。
すぐにビジネスに活用できるかと言われれば難しいですが、この思考は長期的な目で養い、ビジネスに活かすもの。

この記事を読み終えた後は、数年後の自分や事業の成長の種まきとして、近くのギャラリーや美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

石井この記事を書いた人

会社と求職者の『真のマッチング』を目指す、株式会社NOVELのライター。 大阪生まれ大阪育ち、大阪ドームと同い年(1997年)と生まれながらの大阪っ子。 小学生の頃から読書・作文・同人小説執筆にどっぷり浸かり、必然的にライターという職種に惹かれNOVELにジョイン。 現在は情緒ではなく情報に向き合い続け、日々頭を捻りながら採用支援に注力。 最近のマイブームは愛してやまない飼い犬(シーズー)の脇腹を思いっきり吸うこと。

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